未来をよこせ②~試用期間中の解雇は不当!本田福蔵の闘い
「2008年12月2日、勤務していた会社から試用期間中に解雇された本田福蔵(よしぞう)さん(23)は、解雇無効と地位保全を求めて大阪地方裁判所に仮処分を申し立てた。「仕事がしたい。」「あきらめたくない」。若者の願いを伝える闘いが始まった。
午前7時半。12月2日、大阪・北区。出勤する会社員にマイクを使って呼びかける若者がいた。本田福蔵さんだ。小さい時から、親、友人らと登山やキャンプによく行き、自然と関わる仕事に就くのが夢だった。大学受験も農業や畜産、水産関係の学校を受け、最終的に工業大学へ進学。授業や教授の話を聞くうちに、漠然としていた夢は「土木」という仕事になった。自然とのかかわりもあり、社会生活には欠かせない仕事。将来に向けての思いが固まった。
海外の土木の知識を身につけられるようにと、英会話サークルに入った。就職活動も最後まで土木にこだわった。4年生の10月、すでに土木以外の会社から内定を得ていたが、就職活動を再スタート。周りからは反対されたが、自分の納得のいく仕事がしたいと夢にかけた。そして08年1月、日本基礎技術株式会社から内定通知。何とか先が見えてきた。
同年4月、新卒の技術系社員として入社。早速、工場での機械整備・分解などの研修が始まった。覚えることも多く、毎日が必死だった。それでも機械について一つ一つの作業を着実にこなしていこうと頑張った。6月末になると、なぜか自分と同期のAさんにだけ、いつも注意が厳しくなった。「作業ができなさすぎる。」「間違いばかりするな。」「失敗するとやめさせる。」 気になったが、もと頑張らないとと逆に奮起させられているようにも感じた。研修中の7月11日、同期の中から現場に出るメンバーが決定した。本田さんとAさんには「もう少し工場で頑張ってもらう。でも7月中に現場の配属先が決定するから」と告げられた。他のメンバーに先を越されたが、自分も7月中に現場に出ていくという言葉が聞け、うれしかった。
ところが7月27日の夜、母・尚子さんから電話がかかってきた。「会社の人から、辞めさせてほしいって言われたけど。」本田さんはあまりの内容にとても信じられなかった。尚子さんは、会社からの呼び出しに「何事か」と出かけたという。その場で「このままの状態では大事故になりかねない。現場に出せないので、息子さんには会社を辞めてほしい」。説得は4時間にものぼり、応じようとしない母尚子さんに会社は「本田君が犯罪でも起こしてくれていたら、もっと解雇しやすいんですけどね」とまで平然と言ってのけた。
7月中に配属先が決まるのじゃなかったのか。翌日、不安を抱えながら出社すると、工場では普段と変わらない機械整備の研修が待っていた。やっぱり何かの間違いだったんだ。安心して次の日も同じように出社すると、工場ではなく食堂に呼び出され、告げられた。「試用期間中なので、会社は採用をいつでも自由にとりけすことができる。」
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08年7月29日、午後。本田福蔵さんは社員食堂で突然の解雇通告を受けた。
会社は「このまま現場に出せば大怪我をする。そうなればお前自身や家族だけでなく、社員や会社にも影響が出る。自主退職願を提出するか、採用取消通知を受け取るか」と迫った。自主退職を勧められたが、納得がいかず、「自主退職願は書けません」。上司は、「いいよ。それがお前の判断なら」。会社から出ていくよう命じられた。
3か月前に入社したばかり。あこがれの「土木」の仕事と、必死に研修を受けてきた。上司から「7月中に配属先が決まるから」と聞かされ、いよいよ現場業務が始まると意気込んでいた矢先のことだった。すぐに労働組合・なかまユニオンと弁護士に相談したが、会社が解雇理由とした「間違いを繰り返す」「睡眠不足で注意力の低下が見受けられる」が頭から離れなかった。確かに、機械整備の仕事が遅かった時もある、研修中に寝坊して遅刻したこともある。会社の言っていることも間違ってはいないのでは・・・。
悩みながらも、解雇撤回を求めてユニオンに加盟し、団体交渉をすることにした。2回の団交では、解雇理由が事実と異なることやオーバーなものが多いと訴えたが、解雇撤回には至らなかった。だが、交渉の中から過去にも今回と同じ形で試用期間中に解雇されたと思われる人がいることが分かった。
本田さんが解雇通知を受けた日も、実は同じように通告を受けた人がいた。同期のAさんだ。彼の辞めさせられ方も、本田さんと全く同じ。まず会社から親に解雇したい旨が伝えられ、その後本人に通告。Aさんは本田さんと入れ違いに食堂へ呼び出され、「次の会社で頑張ってくれ」。Aさんはそのまま自主退職した。自分だけじゃない。こんなことは止めさせたい。
争議となって、気持ちが落ち着かないことが多い。団体交渉や社前のビラまきで「働きたい」と声を上げながらも、こんなことをしても会社からは好印象を持ってもらえない、矛盾したことをしているという思いがいつも頭をよぎる。 それでも、解雇無効と地位保全を裁判所に申し立てるところまで踏み切れたのには、同世代の闘う仲間の存在がある。松下争議の吉岡力さんや正社員化を求める大西真波さんの姿には勇気をもらった。1月16日には、本田さんを支える労働者・支援者が集まって、「日本基礎技術・本田君の不当解雇を撤回させる会」が発足。東江睦さん(24)は「同い年の者が手を挙げなくてどうするのか」と共同代表になることを表明した。
本田さんは会の結成で「会社前でのビラまきやマイクで訴えることへの抵抗感はまだ消えないが、嫌がっていては相手に思いは伝わらない。争議することを選んだ以上、悩んでいることを言い訳にしても仕方がない。もう迷っている段階じゃない」と気持ちに一つの整理がついたという。「自分が立ち上がったことで、少しでも会社のやり方が変わったらいいかな」。本田さんは自分の闘いに未来を託している。(週刊MDS1069・1070号より)
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